ザ・サン・ブレイキングスルー・クラウズ!!コート完成ノ日ニ作家・張本人ノEXHIBITONヘ。
column 025
まだまだ夏だ、まだまだ暑いと思っていたら、アートコートが出来上がったときにはいっぱしの秋になっていた。10月7日、オープニング前夜。ついに完成した後、そのまま着替える時間もないままにこのアートコートの張本人の個展へと向かった。我々のささやかな感動と興奮についてのコラム。
Article_go parkey
We are playground basketball residents like pikeys!!!
このコラムはアートコート完成後、ローンチイベントより前に書いている。もっというと、アートコートにノーチャージング・ラインを描き込んで、完全体となったコートを完璧な青空と鮮やかな雲とともにドローンで撮影し、水まわりを鉄たわしでしっかりとクリーンナップし終えて時計を見たら16時30分を過ぎていたので、急いで車に乗り込んで東京は東品川で開幕したばかりの舘鼻則孝氏のレセプションに向かった後、その感動と余韻のままに書いている。時刻は午前2時になろうとしている。この日、最後の仕上げをしたプロジェクト・バックボード(以後PB)のサムはどこかで乾杯しているかもしれないな。バックボードのリペイントもしてくれたエドウィンは完成の瞬間を撮影していたシェルトンとR&Bな音を求めて街をクルーズしている気がする。クタクタにがんばったABは爆睡しているだろうか。せめて歯は磨いて寝てるといいな。
ドリューは今日はオフだったからレセプションのときは髪型からシャツまでバッチリきまっていたな。そしてアーティストの舘鼻さんはアフターパーティで様々な美術界の人たちと談笑している頃だろうか。とにかく、go parkey通算4つめとなるアートコート、吉川アクアパークは完成し、その日にアーティスト張本人の個展の開幕に立ち会うことができ、素晴らしい新作品をまるで触れ合うようにマジマジと鑑賞する。そして、アーティスト本人とその感情や感想を共有できる。そんな一連の物語を1日のうちで体験できるのは、なかなかないことだと思う。こんなに美しいフロウはまさに奇跡に近い。蛇足だが、ギャラリーに集ったゲストさんたちは、シルエットも色合いも美しいスタイルだったが、我々は、完成作業後のギリギリの来場になったため、ドリュー以外はザ・ペインターな装い。しかし、主役の舘鼻さんはじめ、みんながそれを良しとしてウェルカムしてくれた。それもリノベーション&アートコート・プロジェクトならではのことかもしれない。
舘鼻さんはじめ個展スタッフはメゾンマルジェラのタビシューズで統一されていたが、奇しくもこちらはサムもエドウィンも資材大手量販店コーナンで出会った地下タビを気に入って、連日ペイント作業をしていた。そのコントラストがまたいい。思えば、舘鼻さんのオフィスに行って、プロジェクトのストーリーと今回の公園の利便性や環境を話した日。そこで舘鼻さんの代表的な絵画シリーズの『Descending Painting』の素晴らしさ、そしてそこにある雷雲の魅惑。個人的には、ときに激しさに射たれる自棄的な快感を思い出す。春雨や濡れて参ろうより、デビッド・フィンチャーの『セブン』のどうせ雨続きなら傘などいらぬ、ぐっしょり濡れてコーヒーを飲むぜ、な感覚。その絵画を見ながら、こちらの胸の内も伝える。恐る恐るというよりは、恐縮しながらもそこはSbと同じく直球で逃げも隠れもせずに。「この公園は災害時は川の氾濫を防ぐための貯水池になる目的で作られている。そしてバスケットやスケボーは雨を望みシンギング・ザ・レインするのではなく、太陽を仰ぎ見て晴れに歓喜するもの。なので、舘鼻さんの太陽も見てみたいです。この公園で」と。
そこからの舘鼻さんは凄まじかった。当初は、スケジュールなどの関係で、アーカイブされた作品をペイントさせてもらう話だったのが、数日後には完全描き下ろしの絵画のドラフトが届いた。しかもいくつものレギュラーワークに加えて、同時進行で個展(10月7日より)に向けての怒涛の日々を過ごしているのにも関わらず。きっと鬼気迫る顔で、なにかが降りてきたようなエネルギッシュさで手と心と目と感性をフル動員していたに違いない。いや、もしかしたらいつも通りの柔和でシルキーな所作のままだったかもしれない。そんな見えない部分を想像して遊ぶ。勝手に遊ぶ。それがまたペイント作業のときのエナジーになる。そうして、薄明光線(光芒)なる気象現象をモチーフにして描かれた作品が出来上がった。それからは、PBの面々とともにgo parkeyはグラウンドワークと撮影モードに突入。途中、舘鼻さんやお子さんとともに、地域のキッズや人たち、そしてgo parkeyをプッシュしてくれるキッズも加わって、ペイント・ワークショップも行った。
今回のコラムはgo parkeyが感じた一方的な偏愛で、舘鼻さんとのストーリーを書いている。ワークショップのとき、エドウィンに乱暴に手渡された大きなペイント用のモップで、舘鼻さん自身で光芒のメインとなる中心部を黄色で塗り進めていく光景は、とても印象的だった。著名なアーティストが、大きな作品の一部になっていって、子どもとキャッチボールするように自然と微笑んでいる。さまざまなアプローチで、さまざまな人の手がジョイントして出来上がっていくアートコート。その現場はいつも大変だが、楽しい。そしてその楽しいはかぎりなく嬉しいという感情に近かった。その後、雨が降ったり、急遽ペンキを追加しなければいけなくなったりといつくかの「ありがちな」ハプニングをクリアしつつ、当初の青写真よりわずか2日ほどの遅れでコートは完成した。そんなとき、その日のコートの進み具合を毎日共有していた舘鼻さんから、個展のインビテーションが届く。完成したアートコートを張本人のアーティストの個展で共有し合う。そんなストーリーはまるで映画のような出来すぎたものだ。
10月7日、個展当日。直前で、サムがノーチャージングエリアの線を引いてないことに気づく。現場にいたgo parkeyの面々もスルーしてしまっていた、完全なるミス。「ありがち」なハプ二ングの松竹梅の上の特別ラインがオーダーされてしまった。残ったペンキをピックアップし片付けた工具を積み込んで、東京から吉川を目指した。ただ競技線を付け足すというのではなく、それを引くためには周辺の作品部分のカラーも再度タッチアップしなければならないのだ。ここもこだわりだ。その後の雨予報が信じられないほどの青空だった。三連休のスタートということで大渋滞のハイウェイ。なんとかたどり着いた現場、すでに太陽は傾きかけていた。PBのすさまじい職人技でペイントは完了、同時に我々はクリーンナップ作業もできて、ドローン撮影も完了させた。これで、本当の本当で完成。素晴らしい青空と陽の光の下、舘鼻則孝氏が描いた雷雲や光芒の絵画は誰一人の足跡もドリブルの跡もまだつけていないまま、輝いていた。ため息。そして達成感。疲労と安堵。そして感動。それから、急ぎ東京の舘鼻さんの個展会場を目指した。一応、俺は大人なんでね、というかオッサンなんでね。一緒につくってくださったアーティストの晴れ舞台に赴く者として、アーティストの普段の格好や好きな傾向を連想し、黒のセットアップの着替えと靴も用意して車に積んでいた。しかし、着替える間もなく、ショーのクローズぎりぎりに到着する始末。申し訳なさと、(TPOわきまえないやつとか周りに思われてるんだろうなあという)恥かしさ的逆ギレ感。しかし、会場で今夜の主役、舘鼻さんの「完成しましたね」という笑顔を見て、全部がふりほどけた。そして入口のメインウォールに、アートコートになった作品(大型)が、アートコートとは違う、舘鼻さんらしい、これぞ舘鼻さんという色合いでレイアウトされていた。素晴らしかった。さっきのさっき完成してドローンでまふかんで見た特大の舘鼻さんの作品が、今度は目の前にあった。ギャラリーとプレイグラウンドで同時に感じる作品のエナジーと美しさ。こんな体験なかなかできない。とても良い、トルゥーストーリー、ストレートストーリー。さすがに感動してしまった。そのまま素直にそれを伝えると、舘鼻さんは笑って言った。
「ペンキだとこの色がないから。調色しなくちゃいけないもんね」
たしかにそうだ。ペンキのカラーパレットと、アーティストが自身のこだわりでもある「使う色、彩色」には、まだまだギャップがある。そういうそもそものギャップからはじまって、しかし特大のキャンバスとそこに来るキッズの未来に思いを馳せつくっていく。おたがいがストーリーをひとつにしていく。なんて楽しいんだろう。心からそう思った日だった。さて、そんな舘鼻さんの個展を後にし、腹をすかせた完全にやりきったモードのPBの面々をレストランへ放逐し、我々go parkeyの2人は某アトリエへと向かった。そこでアーティストとペンキとミートアップ。そうなのさ、新しい旅のはじまりなのだ。疲れてる場合じゃないぜ。ふんぞり返って業界ヅラしてる場合じゃないぜ。旅はまだまだ続く。すべてはライトエナジー、正しく楽しく。
追伸、舘鼻さんの光芒も描かれた作品のタイトル、いわば吉川プレイグラウンドの名前とも言っていいタイトル、それは『The Sun Breaking through Clouds』という。スカッとする良いタイトルだ。