ラブ・ゲーム・レポート!ナイトゲーム観戦ノ随筆都市ノマンナカデ、生キタ音ヲ聴ク。

column 019

7月22日と29日の土曜日開催の『LOVE GAME by go parkey -URBAN NIGHT LEAGUE』。ふらりと観戦に来てくれたライターの坂崎さんが書いてくれた、客観性に富んだコラム、『都市のまんなかで、生きた音を聴く』。

Column

Article & Photography_Mayu Sakazaki

We are playground basketball residents like pikeys!!!

今日も暑い一日になりそうです、なんて歌い出す余裕もないほどの炎天下にあおられる7月の終わり。誘われるままに新宿駅のホームに立っていた。東口を出ると、人だかりと日差しの強さ、音の洪水がおしよせてくる。新宿っていつもこんな感じ? と思っていると、アルタ前から伊勢丹、マルイあたりまでの道路を封鎖して、沖縄の民族衣装を身につけた若い人たちが踊っているのが見える。新宿で夏の風物詩になっているという「新宿エイサーまつり」だ。お盆に祖先をあの世に送りだすための念仏踊り。太鼓の音と島唄が響きわたる新宿の街を、みんな何ごともないかのように歩いていく。あちこちでさまざまな出来事が起こっていて、みんな好きな格好をして、誰のことも気にしていない。無関心ゆえの自由、都市のこういうところが私は大好きだ。エイサーまつりと同じ日に、大久保公園で開催された「LOVE GAME by go parkey - URBAN NIGHT LEAGUE」。パークに向かう前に、ちょっと冷たいものを飲みたくて椿屋珈琲に入ると、満席で40分待ち。

2階から階段をおりて通りに戻ったとき、ちょうど男性カップルが入ろうとしていたので「満席みたいですよ」と声をかけると「助かりました!」と笑顔で返してくれる。近くのミスタードーナツも満席。新宿の最高気温は36度、途方に暮れていると一緒にいた夫が「あそこは?」と見つけてくれたのがジャズ喫茶「DUG」だった。新宿靖国通り、ピカデリー隣の地下。1961年から営業しているという「DUG」は、マスターがジャズ写真家らしく、壁がジャズミュージシャンのポートレートで埋まっている。ジョン・コルトレーン、マイルス・デイヴィス、ビル・エヴァンス、セロニアス・モンク、ホレス・シルヴァー。充満する煙草の匂いも、こういう店ならスタイルになる。夫はフレッシュレモンジュース、私はカフェラテシェケラートを注文した。カフェラテシェケラートとは、シェイカーに熱いエスプレッソと氷と砂糖をいれてシャカシャカしたもので、イタリアの夏の定番なんだそう。泡がビールのようでとても美味しかった。

右隣には楽器と音楽の話をする大学生が2人、左隣にはイラストレーターが2人座って話し込んでいる。大学生たちが言う。「就職したって結局ブラック会社みたいなところで嫌な思いするんだから、だったら最初から就職なんてしたくない」「とりあえず中古のギター見に行こうよ」。イラストレーターたちが言う。「一冊まるごとイラスト描くと80万くらいくれる出版社があって、その仕事があったから生活できてたけど今年は声かかんなくてやばいよ」「イラストの賞も年齢制限あって40過ぎると応募できるところがないんだよね」。向かいに座る夫を見ると、レモンジュースが酸っぱくて咳き込んでいる。煙と雑談を浴びて2杯で1620円、とてもいい店だった。15時過ぎに大久保公園に着くと、歌舞伎町2丁目にあるアートコートにたくさんの子どもたちが集まっていた。go parkeyがリノベーションを手がけ、ケヴィン・デュラントと2Kがドネーションし、国際的なアワードを受賞した世界にひとつのバスケットコート。

プロのボーラーたちにスキルを学ぶキッズクリニックと、キッズたちのピックアップゲームが始まっている。声をあげて喜びを表現する方法も、ステップバックやユーロステップ、シミーしてスリーポイントを打つ姿も、みんなNBA選手顔負けだ。コミュニケーションがうまくいかなくてお母さんに泣きながら抗議していた少年も、最後までしっかりプログラムに参加していた。笑って泣いて汗だくになって、夏休みは一瞬で過ぎていく。夕方にさしかかると、少しずつ大人たちが集まってくる。デザイナーの出田祥蔵さんと漫画家の小山ゆうじろうさんも大久保公園にやってきた。出田さんはクリッパーズのカワイ・レナードが好きで、小山さんは昨シーズンのプレイオフでヒートのジミー・バトラーの活躍を見ていたそうだ。ふらっとやってきた2人も、子どもや大人に混ざってアートコートでシューティングを楽しんでいた。無料でそこに「居る」ことができる公園は資本主義にのみこまれてどんどん減っている。

お金を使う気がない人は街にいることすらできない。バスケが好きでもストリートのコートはほとんどない。そんな日本だから、このアートコートには宝石以上の価値がある。年齢も国籍もさまざまなボーラーたちがナイトリーグのために続々と集まり、17時過ぎにはゲームが始まった。日本語と英語が入り乱れ、だんだんと熱を帯びていく試合をコートサイドで楽しむことができて、2016年にオラクル・アリーナで見たウォリアーズや、2019年にバークレイズ・センターでネッツを見た夜を思い出す。あのときはカリーが欠場で残念だったけど、トンプソンが大活躍してオーバータイムの末に勝ったんだよね。仕事でニューヨークに行ったときにムリヤリ観戦したネッツの試合は、大差がついたのと疲れてたので爆睡しちゃったんだった。それからコロナがあって、色々あって、今ここでまたバスケットボールの試合を見ている。

大久保公園を包囲するカオスな人の群れを見渡すと、客を待つ女の子も、目が血走ったおじさんも、みんな子どものような顔でゲームを眺めていた。途中、少し抜け出して食べた「焼きあご塩らー麺 たかはし 歌舞伎町店」の醤油ラーメンは、こんな暑い日にぴったりのしょっぱさだった。炎天下のコンクリート、エイサー踊り、レモンジュースの酸っぱさ、ボールの手ざわり、ストリートのピックアップゲーム、夜の歌舞伎町にうごめく有象無象。すべてがあまりにもフィジカルで、都市で遊ぶことの高揚感をひさしぶりに感じられた一日だった。デジタルでメンタルな日々のなかで、物理的・身体的な遊びは疲れる。でも、だから楽しい。それが夏という季節なんだろう。

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ヨセアツメテ、アートコートデ煮込ンダ味。ナイトゲーム& LOVEゲーム顛末記。チームPARKEIES!!

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タマゴ・カケ・ゴハン?ナイトゲーム顛末記。LOVEゲーマーズヲ体現。チームT.K.G