追憶ノ香リ、ニヒルニ笑ワセルベルトンスプレー、AQUA115。
column 027
夜のとばりが降りる頃。高架下でフープをペイントしているアートティスト1人。脚立を支えるアーティスト1人。そんなコンビプレーを遠目に見たら、壁にいってるナイトプローラーに映る。これはれっきとしたリノベーション・プロジェクトの一環で、ベルトンのスプレー缶のクラシカルな香りをバックボードに吹きつけるコラム。
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We are playground basketball residents like pikeys!!!
いよいよ11月11日のオープ二ングデーが近づいてきた江戸川プレイグラウンド。首を長くして待っていたそんな日も瞬く間にやってきて、みんなでオーイエーしてたら、すぐに年末感。新しい年を迎える時、このコートがどんなふうに地域に馴染んでいるのか。とらぬ狸の皮算用ってわけではないですが、そんなことを想像すると、誰かがボールをつく音が聞こえてくる気がします。もちろん、パブリックスペースですので、どんなに遊んでも当然タダです。思う存分にバスケして遊んでほしいなと思います。ちなみにオープンデーは、AIN’T NUTTIN’ BASKETBALL LABのマスターRICKYによる公園バスケならではのクリニックと、キッズにフーディングとしてお菓子を配ったり、アーティストの作品をモチーフにしたお面と風船を配布する予定。都会、高架下、アートコート、DJのキャッチーなサウンド。そしてお菓子とお面と風船とバスケットボール。コンフォタブルな空間ならではのオープンイベントになる予感。非常に楽しみです。
オープンデーを目前に控えた今、現場ではアーティストが細かなところのタッチアップと、最新のラフにはなかった、このプロジェクトの一番最初の頃の原画にあったキャラクターのハンドを描き足しているところです。そして、江戸川プレイグラウンドへのスポンサーであるTRIVEとSPALDING JAPANのロゴマークを入念にペイントも同時進行中。ギリギリのところでさらなるブラッシュアップをする。昨夏、新宿大久保公園のプロジェクトで、アーティストFATEが言っていたのを思い出します。「現場は生もの。自分の作品もライブで生ものだから、変化もします」。そんなFATEの盟友でもあるIMAONEもまた現場で描くというライブをしていました。それは、現場環境と反応した即興的なJAZZのセッションのようでもあり、綿密に思案された上でのアップデートでもあります。そんな複雑さとか巧妙さがイリーガルからリーガル、ミューラルアートへとプッシュし続けてきた彼らの真骨頂。一筋縄ではいかないのです。
それはペンキによるペイントでありながら、グラデーションというテクニックで魅せてくれる部分があったり(これはアートコートで初かもしれません)、フリーハンドで弧をペイントするといったところにも表現されています。さらには経年劣化が著しかったバックボードに取り掛かった時のこと。現場にいたIMAONEとSHUTIEがおもむろに取り出したのは、ドイツ生まれの老舗でいなせでニクイやつ、ベルトンのスプレー缶。カラーコードはアクア115。これは今回のコートのメインカラーのひとつ、ティールと合致するカラー。それを吹きつけながら、IMAONEが言う。「懐かしい、クラシックな香りだな」。見上げる壁へのスプレーではなく、見下ろすコートへのペイント作業に集中していたから、懐かしいと言ったのかと思ったら、そうではありませんでした。彼は2002年のロンドンでの記憶を蘇らせていました。セッションしたかったアーティストのメイスと描いた壁。その時のマスターピースがこのベルトンのスプレー缶。ベルトンの香り。そんな話を聞いていたら、こちらも思い出しました。その時の壁の記事がロンドンのカルチャー誌『UNDERCOVER』に掲載されたことを。ページでIMAONEは、こちらが発行するSb Skateboard Journalマガジンについてもリコメンドしてくれていて、その見本誌を1冊もらったのでした。さらには、そこに中綴じされていたコンピレーション・アルバムの1タイトル『WAY OF LIGHT』からインスピレーションを受けたコラム『街道』を書いたことも思い出しました。あの頃から、セッションははじまっていたのかもしれません。妥協しないでおたがいがプッシュしてきたのは間違いないですが、それがカルチャーの欠片になっている。そんなことを感じる色になりました。それがティール、涙色です。
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